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二回目の「ラストマイル」感想 〜ふせったーの感想を添えて〜

あまり同じ映画を何回も見て感想書くことは少ないんですけど、ようやく二回目のラストマイルを見に行けたandふせったーのメモが溜まってきたのでまとめがてら記します。いつものごとくとっちらかっているのですが、前の感想の補足と思って頂ければ……。以下ネタバレしかありません。

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欲しかったステッカー。とっても可愛い!A5のスライド式フォルダに入れましたが、たぶんB6サイズ。大事にします!

 

・公式本とパンフとCUTを関連書籍として購入したんですけど、どのインタビューでも満島ひかり岡田将生が「脚本が面白いけど難しい」って言っていて、たしかに台本の文字情報だけだったらかなり難しいかもと思うなどした。 役者さんの芝居のうまさはもとより演出がかなり効いているし、あと小説と違って台本って説明があまりない(と思うので)難解だよなぁと……。あと二回目見ても台詞の意味合いが解りづらいところがちょこちょこある。例えばサラとの独白の「わたしはどっちだと思う?」とか。

 

・デリファス組の名前や人物造形、服装で思ったことなどのメモをふせったーに書いていたのですが、二回目見て追加で思ったことと山崎、サラについて以下記載します。

 

・五十嵐道元
「道」の「元」って書くんですね。もしかしたら元凶めいた意味も込められてるのかもしれない。別に彼が全て悪いわけではないけど、何かしらできただろ?みたいなところはあるわけで。外資日本支社にいるわぁと思ったところ……本社の詰めに弱くて部下を即売る、部下の手柄をしれっと自分のものにするところ(笑)、表情に乏しくてポーカーフェイスなところ。あとめちゃくちゃ忙しいだろうにトレーニングは欠かさないところ。なんでガイシケーの偉い人ってジム好きなんだろうね?もちろんあのタフネスを維持するためにやってるんだろうけどさ(笑)あと絶対睡眠時間短いよあの人。
ちなみに私は五十嵐が山崎のサインを捏造したのでは説、ゼロではないと思うけどいち会社員が個人の思いでそこまでする意味がないと思うので、やっていたとしても会社ぐるみの捏造だったのではないかと思います。サラがエレナに山崎のことを吹き込んだように……。

二回目で気づいたのですが五十嵐の入社年度は2012年でした。西武蔵LCで働いていた頃は指輪してなかったけど日本支社長になってからは指輪してましたね(たぶん)

 

・梨本孔
初回感想書いてて思ったんだけど私何にも梨本孔のことわかってないんですよね。周りと一線を引いている、自己開示しないと決めているところくらいしか……関連書籍をいくつか読んでいて、最初は割と新人っぽいイメージだった→岡田さんに決まってちょっと年齢を引き上げた 的なことを野木先生がおっしゃっていて、無欲さみたいな部分はたしかにもう少し若い世代から来るものなのかもと思うなど。(孔の生年月日見落としているので明確にはわかりませんが……)
劇中ずっとグレーっぽい服をきている、スニーカーもグレーなのが印象的。エレナとの対比で明確に自分の意思や立ち位置をもっていない、的な示唆なのかな。

二回目見て思ったんですけど、エレナがくるのにスニーカー脱いでたり、最初のシーンも最後のシーンもネクタイがうまく結べていないんですよね。前職ホワイトハッカー(プログラマー)ということもありネクタイ結ぶ機会が少ないというのもあると思うんだけど、ある意味組織に「縛られたくない」の示唆も含まれるのかな、と思います。

あと作中で一番ものを食べているのは彼。マックやじゃがりこ……わりと俗物的な食べ物が好きなんだな。笑  これについては後ほど。
「孔」という名前には「深く掘り下げる」「穴を開ける」みたいな意味も含まれるそうです。これからのデリファスのブレイクスルーを託された人らしい名前だ……。ちなみに転職して2年目、と言っていたので、エレナが眠れなくなった3年目の手前で託されるというのもなんかゾッとしますね。

 

・舟渡エレナ
相互さんもおっしゃっていたけど「舟」を「渡す」という意味、物流のなかでもなんか船便・海外物流をイメージさせられるニュアンスがあって良いですね。

マシュマロで「渡りに船」という諺があります、と教えていただいたのですが、偶然が揃って良い方向に行くことという意味というのと、後から追加で調べたのですが元々は仏教用語というか経典で使われていた言葉が語源らしく、「救済」の意味があるのだそうな。他の方の呟きで「エレーナはギリシャ神話のヘレナというのが語源で光・生命の意味がある」っていうのを見たんですが、それを足すと東洋と西洋の神のイメージが混ざってるんですね。(名前深読みのオタク)

彼女のイメージカラーの赤についてはブログでも書いたけど、爆弾のスイッチを入れてしまってからの独白のシーンは真っ白なニットを着ているのが印象的。初めて買った「白い手帳」に通ずるところがあるのかなー。白い手帳がなんなのか、どういう思いが込められているのかはわからないけれど、わざわざ「白」って明確に言っていたので。彼女の素の部分の象徴なのかもね。

あと、エレナの話とはズレるんだけどシングルマザーの松本家の下の名前が「里帆・海空・七海」と海系の名前なのが素敵。最終消費者は「海」に関連するだだっ広い名前というね……。

二回目見て気づいたのはアメリカの方のIDカードが2015年入社でした。

 

・山崎佑

佑=task やん……って二回目みて愕然としたんですけど、佑の本来の意味には「天からの助け」っていうのが含まれるんですって。だとしたらあまりにも……あまりにも救いがなさすぎる!!!ってなりました。

孔とは対照に倉庫内の仕事なのにきっちりとネクタイを結んでいる姿が印象的。人事考課に「優秀」という記載があった通りきっちりしていたのでしょう……。あとたしか(記憶がぼんやりしているのであれなんですけど)入社年が2009年?とかだった気がする。五十嵐より早いんだーってなりました。

山崎が住んでいた部屋に置かれていた名刺があまりにも汚れていたのが印象的。筧まりかが何回も見てそうなったのか、それとも自分で思うところがあったのか。

 

・Salah Grifin

相互さんがサラのファミリーネームのグリフィンはギリシャ神話に出てくる怪物の名前で黄金の宝を守るって意味があるって感想に書いてらっしゃったんですけど、なんというか会社の財を守るという意味ではすごいピッタリの名前ですよね。

 

・エレナのデリファス内でのポジションとバックグラウンドなんですけど、日系アメリカ人かつ本社採用のイメージです 孔は日本採用だと思う。五十嵐も。

予告見た時からエレナには「この女はアメリカにバックグラウンドがある……」って思ってたんですけど、例えが下手なところとか、自分の範疇にはフルベットで他の部分についてはドライな仕事に対する姿勢とか最後サクッと辞めちゃうところとか(笑)から考えるとすごくアメリカ的だな〜と。これはかなり偏見かつ感覚的な発言なんですけど、もし日本人ならスクラップアンドビルドで立て直しまでやろう!えいえいおー!みたいな感じになると思ったので……。 ただ二回目見て思ったのは爆弾処理後の孔とのシーンで「すごく日本人的?変なところ勤勉?嫌になる」って言ってたので自認アイデンティティは日本寄りなんですね(笑)

5年前はワシントンD.C.にいた→あの時の筧まりかと話してた感じとか見てるとまだ2年目とかだったのかなぁ。もし眠れなくなってからあの話を聞いていたらもっとゾッとしてたと思うので。どっちだろうね。とふせったーに書いていたのですがIDから逆算するとちょうど3年目の時の話だったのかな。(2015年入社) いやまりかが会いに来たのって4年前だっけ……記憶が曖昧なので確認用のシナリオブックがほしい……。

サラにその話をレポートしてたという発言からその頃からサラが上司だったのかも。ワシントンD.C.のセンター長と東エリア統括部長くらいの関係性だったんすかね……。で、サラがAPACの統括部長になり、エレナが復職した時にAPAC統括部付とかで勤務していれば日本に派遣できそう。  

二回目見て思ったのは最後のシーンでサラがエレナに「解雇されるとはね」って言っているシーン、よく聞くとデリファスジャパンには解雇されていたということなんですね。本籍は米国にありながら日本出向で解雇ってあるんか?!?ってわからなくなってしまいました(ものすごくどうでもいい)

孔は転職組だけどたぶんデリファスジャパンで採用されてると思う。なので相当仕事できない限り日本から出ることはなさそう。 でもなんでSEできるのにエンジニア系ではなくロジの方行ったんでしょうね……。笑
五十嵐は5年前の様子(西武蔵野LCセンター長?)を見ているとやっぱ日本採用ぽいな。仕事ができるから日本統括までのしあがったのでしょう。上昇志向が強い感じ含めてああいう人いるよね(半分悪口) 

でも、エレナも五十嵐も自社の株価ちゃんと気にしてて偉い。帰属意識高めだよなー。自社株持ってんのかな(n回目)。二回目で思ったのはエレナが「労基上の(山崎の人事DBの)保管期限が切れているのかも?」って発言がさらっと出てきたり、用意周到な退職時の書類フォーマットとか、社としてこうやって「消して」きた人というか揉め事をなかったことにしたことって割とたくさんあるんだろうなと……。エレナと五十嵐が関わってきた頻度という話ではなく、社としての体質なんでしょうね。帰属意識高めの組織作りは素晴らしいけど内部監査機能ほぼ死んでるの終わってるぜ!

 

・筧まりかについて。まりかがデリフォンを最初の爆弾をしかけ、かつ自殺のアイテムに選んだのってカスタマーセントリックというマジックワードから逆算して考えると結構ゾッとする。 冒頭でエレナがデリフォンについての説明で、デリフォンから購入すると10%のポイントがつく、各種動画サービスを提供できる「お客様のためのサービス」って言ってたのってイコールカスタマーセントリックの意味合いがめちゃくちゃ強いですよね。それを自殺用の爆弾設置に見せかけたの、そのマジックワードのせいで追い詰められた恋人がいるということを考えるとズーン……となる。あと単純にデリフォン(デリファス製品)に目が向いてくれればさらに時間稼げるだろうし。あとTLに流れてきた感想を見て、爆弾を仕掛けたアイテム、もしまりかと山崎の思い出の品々だったらどうしよう、安眠もそうだけど焼き鳥四目ならべで楽しく遊んで気を紛らわそうとしたとかそういうのだったら泣く……と思っていたのですが、やっぱり二回目見てセール品になる商品というくくりがあるからそこまでの意味合いはないかも?と思いました 笑

あと今回見て思ったんですけど、まりかが特定される前に夏代さんが「結婚式のための共同口座も持っていて」って発言があったと思うのですが、爆弾12個で240万円と広告費90万円、結婚式のための共同口座から支払いされてる可能性大じゃん……って気づきました。ざっと計算して300万強、結婚式の初期費用としてはそんなもんだと思う。この映画の中で結構コスト感というかどのくらい・何に・どんな費用がかかっているか(ドライバーの配送費が120円/配達個数、賃上げによる人件費増が160億)がずっと示唆されているんですけど、復讐というか贖いさせるために使ったお金が結婚式費用と同等だったのがあまりにもしんどいなと思いました。まりかとエレナがワシントンで話すシーン、「贖う」って言葉を使っているのがすごく印象的で。「償う」のではなく「贖う」という言葉ってスッと出てくるようなものじゃないなとずっと思っていたんですけど、「贖う」のニュアンスには「金銭的なもしくはその他の対価を払って罪をつぐなうこと」という意味があるのだそうです。まりかが仕掛けたのは復讐でありテロだったけれど、もしかしたら自分の命を払っての贖いも含まれていたのかもしれないですね……。(無差別に誰かを傷つけることに対してのそれかもしれませんが)

 

・ ラストマイルにおける食の描写、フード理論であることは元よりなんですけど、最終消費者である松本家やワンマイルドライバーである佐野親子と孔のファストフードが対比なのかなとと思った、と前にふせったーに書いたことをもうちょっと掘り下げたいと思います。

正体不明な人は何も口にしない……エレナは爆弾処理後の珈琲?紅茶?まで何も口にしていなかったと思う。 と書いていたのですが、いりこのおやつぼりぼりしてました。笑 このしぶいおやつぽりぽりしてるのアンナチュラルの系譜(ミコト)を感じて好きです。(アンナチュラルのオタク)
松本家は調理シーン、佐野親子のお弁当は手作りっぽいのが写ってましたよね。生活に付随する+ちゃんと食べようっていうメッセージだなぁ。

御守が何個があったところから佐野家はお母さんとか家族の存在がうっすら感じられるので、お弁当もお母さんが作ったりしてたのかなあ、と呟いていたのですが、佐野父が「こういうのはもっと味が濃いしょっぺえのがいいんだよ」みたいなクレーム台詞があり、その前の休憩では天丼?っぽいのを食べていた→手作りのお弁当に変わった ってことから、もしかしたらなんですけどこれ息子の手作りだったりする……?!って解釈もある気がして、もしそうだとしたらあまりにも佐野親子可愛すぎるな、と思いました。きちんとケア・マインドがあるんですね。
デリファス側で唯一もぐもぐしてるのが孔で、なんでマクド食べてるんだろ……あとじゃがりこ……と思ってたんですけど、ファストフードやジャンクを口にするイコール中間地点というか「口にできてはいるけど不健全」って状態を表しているのかもね。追い詰められると栄養ってどんどん偏るじゃん……ハイカロリーで時短なものを求めがちだしね……と書いていたところ、マシュマロで「中の人のCMが撮影期間に該当していた」というコメントを頂きました!(ありがとうございます!)

二回目見た時に思ったのは佐野親子のお弁当シーンで「もっとしょっぱくてガツンとするものがいい」「やっちゃんは昼メシ10分だよ」→「そんでやっちゃん身体壊して死んじゃっただろ」がここに効いてきてるのかもなーということです。あとエレナがおなかすいたーって駆け込んできたシーンで「欲」の話をしていたと思うんですけど、ファストフードを選ぶあたりケアが雑、何食べたいとかもあまりない人なんだろうな、と。孔、きちんと食べような……。

 

・佐野親子について。今回ようやく落ち着いてこの二人に重きを置いて見れたんですけど、タバコは吸えども寒くても窓を開けて荷物に臭いがつかないようにする、雨の日は自分の傘そっちのけで荷物にビニールかけて運ぶ等々、ちゃんとしてる宅配ドライバーだよなぁとしみじみ思いました。(余談だけど前日にMIUのシナリオブックがデリファスモチーフの会社から届いたんですけど、無理やりポストに突っ込まれててちょっと表紙がひしゃげててショックだったので……私ずっと在宅してたのにピンポン押さんかったんかい、というのと、でも向こうも限られた時間の中で個数こなさないといけないからなぁ……という気持ちになりました) あと「40にもなって父親に蹴られるなんて」「70過ぎて息子蹴るとは」っていうやり取りを聞いて思ったんですけど、佐野息子はたぶんロスジェネにギリ該当するかどうか〜就職氷河期世代、佐野父は一番の働き盛りがバブル期だったんじゃないかなと思うと、二人の仕事に対する価値観や姿勢がさらに肉付けされる気がしました。佐野息子の「高品質にこだわって安価な外国製品に負けた」ヒノモトの洗濯機の話、あまりにも日本のビジネス史すぎるし、それに対抗して安価なサービスを追い求めた結果が今回の物流業界の話なんだよな、って切なくなりました。

 

・アンナチュラル、MIU組の追加感想。

・青池透子と馬場路子は同じベクトルって話を前にしたことがあるんですけど筧まりかもその系譜にいる気がする……というか二人の要素がそれぞれある人物造形だな、ということで界隈でいわれているとおり中堂さんこういう女たち好きそうですよね。


・「拳銃使っちゃう感じィ?」っていう伊吹に対して「爆弾と火器で火だるまになりたいのか」っていう志摩の発言、ある意味冒頭の爆発シーンへの伏線かつアンサーだったんですね。二回目見て気づいたんですけど(たぶんこれももうめっちゃつぶやかれてる) 点滴に書かれた「ヤマザキ」の濁点をそっと指で隠す志摩、すごく「痛みを知っている人」「その痛みを含めて他者を尊重したい人」って感じで良いですね。あと伊吹の「ハッピーじゃないんじゃない?」って言葉遣いがあまりにも伊吹だなと。ひかりちゃんが舞台挨拶で「伊吹は明るく見せかけてるけど目の奥に悲しみがあってそういうのをたくさん知っている人」(意訳)っておっしゃっていたの、まさにそうだよなぁと。ハッピーじゃないって軽い言葉遣いの向こうの深いレイヤーの部分に人に対する解像度の本質みたいなのが見えた気がしました。これは余談なんですけど米津玄師の「KICKBACK」(チェンソーマンの主題歌)ってめちゃくちゃ伊吹っぽいと思っていて、そこにも「ハッピー」って言葉が出てくるのでちょっと解釈一致だわってニコッとした。

 

・ラストマイルのダブルミーニングについて。野木さんが何かのインタビューでダブルミーニングがあります、と答えていて、いろんな方の感想でたくさんの解釈が流れているのだけれど、誰も取りこぼさない的な意味合いがあるのかなと個人的には思っています。ラストマイル=ラストワンマイルの意味合いで皆使っているけれど、最近はSDGs用語の文脈で「農村部等の流通が弱い末端まで届ける=誰も取りこぼさない」的な使われ方をすることもあるそうな。なんかがらくたの歌詞を聞いていても思ったんだけど「あなた」のことも取りこぼさないよってメッセージをすごく感じたんですよね。もうちょっと深堀りと材料が欲しい話なので二回目見たらまた何か違うものが見つかるかも!と思ったのですがあまりこれと言った結論は出ず……。ただこの話ってずっと現実と地続きで、答えのない問いでもあるからそういう意味の「last」(続く)なのかもな〜とかぼんやり思っていました。

 

ふせったーのつぶやきをまとめながら二回目の感想を追記・修正していたのですが、どんだけつぶやくねんってくらい感想が山盛りですね……。最後まで読んだあなたに拍手を送りたいと思います(何目線?)