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鮮やかないろいろ エンタメ感想が主

お離婚の話

友人が離婚した。

お離婚、とこちらが冗談粧して言うと力なく笑った彼と、共通の友人でもある旦那と3人でグダグダと飲みに行ったのは春先のことである。彼は言った。別に大きな理由があったわけではない、と。海外出張が多い彼と子を望む年上の彼女とは色々と認識の相違があったようで、彼女の手記を真夜中に見つけてこっそりと読んでから「ああ、これはもうだめだ」と思ったらしい。何が書き付けてあったのか、と軽快に開けたワインボトル2本目に口をつけながら急かすと、第三者への恋心、と彼は呟いた。世間体を考えた時に誰にも言えない、恋心。彼は敢えてそれを不貞と言わなかった。責めるつもりもないらしく、何が正しいのかもわからない、と言った。彼女を愛しているからこそ、彼女の恋心を無視することができないのだと。わたしはふと彼の結婚式を思い出していた。病める時なるも健やかなる時も、彼女を愛する、と神前で誓っていて、別にキリスト教じゃないのに神父さんがカタコトの日本語で言っていた。彼は婚姻に忠実に、まだ年上の彼女を愛していた。

それから半年経った冬の入り口のある日、彼と中華ランチを食べている時に彼女ができたと告白された。よかったじゃん、というと彼は目尻を下げて、でも二週間で別れたんだよね、と言った。まぁ、神に誓ったわけじゃなかったからいいんじゃない、とわたしがいうと、よくわからない、という顔をして彼は麻婆麺を啜っていた。わたしは棒棒鶏を口に含みながら、脳内で2年の結婚生活と二週間の恋人ごっこを天秤にかけてみたりなどした。