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花束みたいな恋をした-分け合うことの難しさについて

映画『花束みたいな恋をした』を見て、ツイキャスでだらだら感想会をしたのですが、文字でも落とし込んでおきたいな、と思ったので久々にブログを書きます。ネタバレありきの記事になると思うので、観賞予定の方はスッと読み飛ばしてくださいね。

 

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・分け合うことの難しさ

坂元作品は、冒頭に主題となるような会話劇を持ってくることが多いと感じているのだけれど、本作も冒頭にイヤホンの件を持ってきていた通り、「恋は1人にひとつ」と、一対一の法則を持ち出しているなと。恋に至るまで、2人は読んでいる小説、イヤホン、パフェ、時にはトイレットペーパー、色々なものや価値観を分け合うのだけれど、同棲を始めて、2人の共有財産が増えていけばいくほど苦しんでいく様がなんとも、「人生を分け合うこと」の難しさを描いているなと感じました。告白のシーンで分け合っていたパフェ、最後のファミレスのシーンではモチーフ的にポップとして背景の一部になってしまっていたのももの悲しかったですね。三十路過ぎた人間としては、同棲の共有財産分与ほどエネルギーを使うものはないよな〜とアホなことを考えていました。

 

・エンターテイメントと共に生きることの難しさ

この映画、正直そこまで恋愛経験のない私にとってはあまり共感ポイントが少なかったのですが、唯一、麦が激務の中、真っ暗な会社でパズドラをし続けるシーンには共感しました。ワンオクを「聴ける」と言った麦が…押井守がいることをそれとなく自分の知っている情報でツウぶって伝えてくる麦が…好きな言葉を「バールなようなもの」と言ってくる麦が…(この辺でやめます 笑)わたし個人の経験談なのですが、激務すぎるとマジで脳に余白がなくなっちゃうんですよね。パズドラ好きな方にめっちゃ失礼ですけど、あんまり頭を使わなくて良くなるような趣味しかできなくなるからスマホのゲームしちゃうんですよね。社会人になって2年くらい、好きだった小説や漫画を読めなくなっていたことを思い出してウッ…となりました。

 

・選択できる年齢と、2015年前後の空気感

2人は恋に落ちて別れるわけですが、まぁこの選択肢も、(年齢のことをとやかくいうのはどうかという話もあると思いますが)30さしかかりくらいだったら最後のファミレスのシーンで妥協してただろうな〜と意地悪なことを考えてしまいました。2人、サブカルが好きだけど社会システムに迎合しちゃうタイプだと思うので…。(靴の演出が絶妙でしたよね。真っ白なスニーカーから真っ黒な靴に染まるという)

絹と麦がゆるゆるとフリーターで社会に出て同棲するシーン、正直(この人たちの…生活費はどこから…?なぜこんなゆるふわなの…?)と思ってしまったのですが、絹は実家が太そうな描写、麦は仕送りをもらっていたという描写があってすごく合点がいきました。サブカル、やっぱ心と生活にゆとりがないと成り立たない説。

ちなみに絹の就活描写を見ていて思ったのは、2015年前後は景気が回復してきていたのも相まって、そこそこ選択肢があった時代だと思うんですよね。そこでフリーターを選んだ絹、やっぱりバックボーンが「首都圏に実家あり、両親共働き、おそらく次女」というところにあるからだなぁと思いました。すごく偏った見方なのでここはもう掘り下げませんが…。

 

・キャスティングが絶妙すぎた説

この映画のずるいところは、キャスティングがとにかく上手い!例えば絹が転職するキッカケとなる人物はオダギリジョーで、「いや〜そこにオダジョー持ってきたらみんなそっちにいくっしょ!!!」ってマスクの下でニヤニヤした。余談ですけど絹絶対お前オダジョーと浮気してたやろ。ラーメン食べにいくは隠語ですよね。そのあとの時系列からも絶対そういうことあったやろ感がすごい。

そして最後のファミレスのシーンで清原果耶ちゃんですよ。まぁその…説得力がすごいな!?と思ってしまいました。染まっていない純白感がすごい。そしてあの起点にキャスティングした人マジで天才だと思う。

 

・救いのあるエンディングと、延長線を感じる余白

この映画で一番いいなと思ったのはエンディングで、Googleストリートビューに2人の姿が載っていて麦が興奮する、というので終わるのですが、今後の2人の未来を予見させるような余韻のあるエンドでよかったな〜と思いました。2人、復縁しなくてもまた人生のどこかで交わることがありそうだな、と。

終わってからすごく思ったのが、「もし2人が同性だったらどんな話になったのだろう」ということです。お別れすることなく一緒にいれたのかなとも思いますし、2人が同性だったらそもそも同族嫌悪感で一緒にいなかったのかな、とも。笑 あと「もし、2人が全く価値観の合わない男女だったら」とも考えたのですが、それはカルテットの巻夫妻で描かれていましたね。笑

 

まぁ色々と書いたのですが、Twitterでは「恋人同士では見ない方がいい」という呟きをたくさん見たのですが、逆にこの映画を見て価値観を分け合った方が良いのでは…?と思いました。個人的には麦くんがいつ白ジーンズを履くのかヒヤヒヤしていたのですがそんな描写はなく良かったです。あと、音楽が絶妙に良いんですけど、クレジットで「あまちゃん」を手がけていた大友良英さんと知ってすごく嬉しかった!

映画館に足を運ぶことがあったら、みなさんぜひ感想を教えてくださいな。